CV・CGの徒然日記

研究者の観点からオモロイと思ったCV(コンピュータービジョン)、CG(コンピューターグラフィクス)、HCIなんかの論文やらを忘備録がてら紹介します。

デジタルファブリケーション最前線 風船デザイン

とりあえず、試験的に今日読んだ論文を紹介してみる。

Computational Design of Rubber Balloons

M. Skouras, B. Thomaszewski, B. Bickel, M. Gross

Proceedings of Eurographics


CGL @ ETHZ Computational Design of Rubber ...

まとめ(普通の人向け)

風船が膨らんだときに、自分の好きな形に膨らんでくれたら。。。という願いをかなえる天下のディズニーリサーチ チューリッヒのデジタルファブリケーションの研究。好きな3Dモデル(動画だとアルマジロとかウサギとかがインプット)を用意したら風船が膨らんだときに、その3Dモデルにできるだけ近づくようにしぼんだ時の形を物理シミュレーションと数値最適化によって計算してくれるというもの。風船の素材が今のところシリコン限定だったり、凹の部分や平らな部分を再現するのは難しかったりと実用レベルではあと一歩のところだけれど、膨張時のゴムの物理モデルなどが改善されれば、より汎用性の高いシステムになりそうで楽しみ。

現状のデジタルファブリケーションの問題として、大型のものを作るには、パーツごとに分解して製造しなければならず、材料費、組み立てや部品分解も込みでそれなりにコストがかかるというものがあった。しかし、風船なら、膨らませることで欲しい形を再現することができるので、鋳型のサイズも小さくできるし、材料費もかなりうくという一石二鳥で超画期的。ディズニーはパーマンコピーロボットを作ろうとしているのではないかと邪推している。(あ、駆動部がなきゃ動かないか。。)

このシステムと3Dスキャンの技術を組み合わせれば、オーダーメイドのダッチワイフが一家に一台の時代がやって来るかもしれない。。。

忘備録(研究者向け)

システムのアウトライン

入力の3Dモデルとバルーン膨張時のジオメトリをDiscrete Shell [Grinspun et al, 2004]の関係式に基づいてエネルギー関数化して最適化を行う。束縛条件に膨張状態の面内応力と圧力の平衡条件を入れることで、初期形状(しぼんだ状態)も同時に計算を行う。束縛条件を適用するためには、ペナルティ法や逐次計画法なんかがあるが、自由度を抑えることや安定性を考慮してラグランジュの未定乗数法を採用したとのこと。

バルーンの物理モデル

CGの世界でよく使われる弾性体モデルと実測のバルーンの変形を比較して、最適なモデルを選択しているのはとても興味深かった。

Neo Hokean体はまったく風船の変形を近似できておらず、Mooney Rivlin体やStVK体はまあまあだけれども、やはり風船の非線形な変形を近似できていない。そこで彼らは、不変量の指数関数(上の3つは指数関数でなく、多項式)で歪エネルギーを近似するHart Smith体を用いて、よりよい近似モデルを得ることに成功した。不変量の指数関数を用いるHart Smith体は聞いたことがなかったので、一ついい勉強になった。