デザインは自ら進化するのか? "Fit and Diverse"
最近、Structure Synthesis系の論文を読み漁っているので、その中からちょっと紹介。
Fit and diverse: set evolution for inspiring 3D shape galleries
Kai Xu, Hao Zhang, Daniel Cohen-Or, Baoquan Chen
Proceedings of SIGGRAPH 2012
まとめ(普通の人向け)
家具や家電、キャラクターなどには様々なデザインが要求される。しかし、人間のアイデアから生まれるデザインは枯渇してしまうんじゃないだろうか?もう少し、現実問題で見ても、プロダクトデザイナーは0からデザインを考えるよりもいくつかのデザインの組み合わせでデザインを考えたりする場合もあるので、自分のインスピレーションを掻き立てるような新しいデザイン群を必要とする場合は多くある。今あるデザイン同士が交尾(?)して新しいデザインが勝手に生み出されてくれたら、デザイナーの苦労も軽減されそうである。
生物の世界では、さまざまな種のかけ合わせによって、より種に多様性を生み種の生存確率を向上させるのは周知の事実だ。この概念をデザインに適用してしまおうというのがこの研究だ。
親となるようなあらかじめ用意されたデザインの集合から、任意のデザイン同士を”交配”させることによって、新たなデザイン(子デザイン)が生み出される。これを何世代にも渡って繰り返すことによって、新しいデザイン群が作り出される。各世代において、(生存競争のような要領で)ユーザーが好みのデザインを選り分けることで、優性遺伝・劣性遺伝のように、自分の好みを反映させながら新しいデザインを生み出せるというのも大きなポイントだ。
ある程度形の決まっている家具だけでなく、TV向けモンスターをどんどん交配させて新しいキャラクターが作られているのはかなり衝撃である。将来的には、デジタルファブリケーションの技術と組み合わせて、生産機能を持たせることができればビジネスとしても十分に機能しそうだ。現状では物理的な拘束(重力下で倒れたりしないか?や体重がかかりすぎて折れてしまう部分はないか?)などの考慮は厳密にはされていないので、選別過程にフィルタリングしておくなどの処理で、実用化することも近いうちにできるんじゃないだろうか?
忘備録(研究者向け)
”交配”について具体的に説明すると、二つのデザインの意味空間上で等しいパーツ同士(背もたれなら背もたれ同士、脚なら脚同士)を「交換(Crossover)」「変形(Mutation)」させることによって親のデザイン特徴をキープしながら新しいデザインが生み出される。意味空間上で厳密な対応付けができない部分(たとえば背もたれの中の支え木的なもの)はFuzzy partと呼んで、形状ベースの対応からCrossoverとMutationを行っているらしい。2つのオブジェクトの距離のメトリックとして、ハウスドルフ距離(Hausdorff distance)というものがあるのを初めて知った。各パートを方向付きバウンディングボックスでフィットさせることで、各パーツ同士の比較が可能になっているというのも面白い。
ここらへんの領域は完全に、初体験ゾーンなので、実装レベルでの理解にはもう少しかかりそう。